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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第4章 春の夢 四

 夢のような、穏やかな春の光景だ。
あの夜―お須万とめぐり逢った日と同じように、菜の花の黄色が優しく風に揺れていた。
 清七は和泉橋のたもとまでゆくと、枝垂れ桜の下にそっと赤児を置いた。
 赤児を置いて清七が物陰に身を隠したまさにその時、町人町の方から二人の人影がもつれ合うようにあい前後して近づいてきた。

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