
甘い蜜の―――……虜。
第2章 初めての一人暮らし。
「ノックしても出ないから、入っただけ……?」
一歩一歩、俺を追い詰めるように距離を縮める。その度、俺は一歩後ろに下がった。早くドアを開けて逃げないと。頭の中で俺が叫んだ。
―――ドンッ。
ドアノブに手を掛けた俺の手を、オオノが掴んだ。そしてもう片方の手は俺の隣を通り抜け、真後ろの扉に音を立て、俺の逃げ道を塞いだ。
俺の左手を掴んでいた手がするりとほどけ、ドアの鍵をかける音が響いた。
鍵を掛けたオオノの手が再び俺の手を掴んだ。俺の力じゃ振り払えない、強い力だった。
俺が目を見開いてオオノを見ると、変わらず冷たい目をしていた。
「……何……すんだよ……」
やっとの思いで発した声は、蚊が
なくように小さいものだった。
「人の家に不法侵入しといて、その態度はないだろう……」
オオノに睨まれながら、俺は絞り出すように言葉を発した。
「家っ……の中にいるくせにっ、居留守使う方が悪いんだろ……っ」
小刻みに震える肩を痛いくらいに掴みながら、オオノは顔を近づけてきた。
怒鳴られるのか。それとも、殴られるのか。感情のない目が嫌に恐ろしかった。
得体の知れぬ恐怖心の中、俺は逃げるように強く目を閉じた。
オオノの吐息が、前髪にかかった。
ふわふわと揺れる前髪がくすぐったい。
次の瞬間、唇に何か違和感を覚えた。目を見開くと、すぐ前にオオノの顔があった。
「……っ!?」
一歩一歩、俺を追い詰めるように距離を縮める。その度、俺は一歩後ろに下がった。早くドアを開けて逃げないと。頭の中で俺が叫んだ。
―――ドンッ。
ドアノブに手を掛けた俺の手を、オオノが掴んだ。そしてもう片方の手は俺の隣を通り抜け、真後ろの扉に音を立て、俺の逃げ道を塞いだ。
俺の左手を掴んでいた手がするりとほどけ、ドアの鍵をかける音が響いた。
鍵を掛けたオオノの手が再び俺の手を掴んだ。俺の力じゃ振り払えない、強い力だった。
俺が目を見開いてオオノを見ると、変わらず冷たい目をしていた。
「……何……すんだよ……」
やっとの思いで発した声は、蚊が
なくように小さいものだった。
「人の家に不法侵入しといて、その態度はないだろう……」
オオノに睨まれながら、俺は絞り出すように言葉を発した。
「家っ……の中にいるくせにっ、居留守使う方が悪いんだろ……っ」
小刻みに震える肩を痛いくらいに掴みながら、オオノは顔を近づけてきた。
怒鳴られるのか。それとも、殴られるのか。感情のない目が嫌に恐ろしかった。
得体の知れぬ恐怖心の中、俺は逃げるように強く目を閉じた。
オオノの吐息が、前髪にかかった。
ふわふわと揺れる前髪がくすぐったい。
次の瞬間、唇に何か違和感を覚えた。目を見開くと、すぐ前にオオノの顔があった。
「……っ!?」
