それでもきっと
第2章 にんじん
否定するなり安心した表情を浮かべ手にあるものを握らせてきた。
「秘蔵DVDだ。これで交渉は丸く納まる」
謎の自信に満ち溢れたグーサインを目の前に突き立てられ、綺麗に伸びた親指を折りたい衝動に駆られた。
完全に無理矢理追い出され、とにかく兎に会わないといけない状況になってしまった。
無意識か、それとも意識のしすぎか、兎の家へ向かう中しきりに唇を触っていた。
とりあえず謝罪でこの秘蔵DVDを押し付けよう。
そう思っていると、窓にガムテープで破片を張り付けたなんとも痛々しい家が姿を表した。
自分でやったことなだけに胸が痛む。