陽が当たらない場所で
第6章 変わっていく
「わ!」
思わず、声が出た。
すぐ横を通った自転車の風が
吹き、スカートがヒラッと動いた。
…って、あぁ。びっくりしたー
制服は、冬服になり
スカートの下にストッキングを履いているがまだ夏服を着ている感覚が残っている。
…私、なんでこんなビビってるの。
再び、歩き出すと、
また横から自転車が通った。
風は、穏やかで心地良かった。
…ぁ。
自転車に乗っていたのは健太だった。
そのまま加奈の横を通り、
目の前にある急な坂を
立ちこぎで進んでいった。
金曜日のあの日、
私は逃げた。
『とにかく泣き顔を見られたくない』
の一心で逃げた。
私から健太の顔は見えなかったから
多分あっちも見えないと思うけど…
私はとにかく恥ずかしかった。
心の奥にある自分を
見せたくない。
弱虫ですぐに緊張してしまう私を。
些細なことで泣いてしまう私を。
健太のことが大好きな私を。
今は、見せられない。いや見せたくない。
今も、これからも。