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甘い裏の顔

第1章 秘密

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ガチャ…

「ただいまぁ…」

やっとバイトが終わったのは21時。
あたしは制服に着替え直して帰宅した。

「千尋っ、あんたまたこんな時間に…」

玄関に入るとすぐに母親が駆け寄ってきた。

「図書館行ってた。そっちの方が勉強出来るから…」

もちろん嘘。
バイトしてるだなんて口が裂けても言えない。
しかも、メイドカフェなんて尚更…。

「…そう。ならいいんだけど。テスト終わったからって、油断してたらダメよ」

帰るなり勉強の話。
あたしのお母さんはいつもそう。
うちの両親はあたしが小学5年生の時に離婚して、それからお母さんは女で一つであたしを育ててくれている。

「今の時代、どんなにいい大学出ても就職先なんてないんだから。男になんて頼っちゃダメよ。あんたは一人でも生きていけるように頑張らなきゃいけないのよ」

お母さんはいつも男なんて…って言う。
異常に男という生き物を軽蔑している。

「分かってる…」

あたしは逃げるように自分の部屋に行った。




この家は、息苦しい…。
本当の自分なんて出せない。
ただあたしは、お母さんの理想を叶えるためにいるだけ。
あたしの人生なんてまるで無視。
高校も、大学も、就職も、すべてお母さんの望むもの。
あたしの成績が良くなればなるほど、お母さんからも先生からも期待され、悪くなれば冷たい言葉を浴びせられる。
そんな息苦しい生活を、これからも送らなければならない。
あたしが存在する意味なんて、あるんだろうか…。
そう思うと、いても立ってもいられなくなる…。

だから………


あたしはクローゼットから、小学生の時の体操服を取り出した…。


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