イキシア
第2章 第一章
「父上様もすでに我慢の限界といったご様子ですから。
無理もありません。
私共で何とか兄上様をお助けできればよいのですが。」
「あれは、あたしたちじゃもうどうにもできないわね。
母上様は何て?」
「それが……兄上様が出ていかれたことがよほどショックだったようで、気を失ってしまわれて。
現在、自室で休養中です。
しばらくお休みになられた方がいいかと。」
「そう……。」
「兄上様、大丈夫なのかな。
もし人間さんたちに見つかってひどいことされたりしたら、わたくし……うぅっ……。」
「フクシア、泣かないの。
きっと大丈夫よ。
あのバカ、最悪殺しても死ななそうだし。
そのうち満足してひょっこり帰ってくるわ。
まぁどのみち、父上様にこってりしぼられるでしょうけれど。」
「姉上様の言う通りです。
ここで心配していても仕方がありません。
私たちは兄上様が無事で帰ってこられることを祈りましょう。」
「姉上様たち……。」
カトレアが優しくフクシアの頭をなでる。
彼女は温厚で気弱な母親に似て繊細だった。
兄であるイキシアを誰より慕っているのもフクシアだ。
不安なのだろう。
(兄上様、光海に出てはしゃいでいる頃かしら。)
早く帰ってきて欲しい。
さすがのカトレアも、そう思わずにはいられなかった。