イキシア
第2章 第一章
そんなことを考えていた時、部屋にノックの音が響いた。
ベッドから起き上がり、カトレアはすぐさま衣服を整える。
ギボウシか。
側近たちか。
イキシアが兵士に見つかり引き戻されたのだろうか。
それともまさか――。
嫌な思考ばかりがよぎる。
「どうぞ。
開いているわ、入って。」
「失礼します。」
「姉上様。
いきなりごめんなさい。」
「……貴女たち。」
カトレアは安堵とも、落胆ともとれるため息をこぼした。
部屋を訪れたのは二人の妹。
サルビアとフクシアであった。
肩のあたりで切り揃えられた短いプラチナブロンドに眼鏡がよく似合う、大人びた風貌のサルビアは、わずかに顔を曇らせている。
彼女とは対照的に、ツインテール姿の童顔なフクシアは今にも泣きそうな顔をしていた。
「もう、驚かせないでよ。
心配して損した気分だわ。」
「……?」
「姉上様、心配ってまさか兄上様のことを?」
フクシアが聞くと、不思議そうに首を傾げていたサルビアも納得したように頷く。
カトレアは彼女たちを自室のベッドに座らせてから、ばつが悪そうに眉をしかめた。
「……まあ、ね。
あんなんでも一応、この国の次期国王様だもの。
そりゃあ心配にもなるわ、いくらこのあたしでもね。」
「姉上様、やっぱりすごいわ。
わたくしも兄上様が心配だけれど、あんな状態の父上様を諫めるなんてとてもできなくて……。」
瞳を潤ませるフクシアに、サルビアがすかさずハンカチを渡す。