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紅姫と黒猫の夜

第1章 悩み

コンコン

戸を叩く音が鳴り響く。

「どうぞぉ…」

はっと我にかえると、いつも通り、少し間延びした返事を返す。

キィ

小さく軋む音がして戸が開くと、現れたのは自らの従者、夏黄文であった。

「紅玉姫。お暇ならば、私が話の相手になりますが?………おや、その様子だと………またシンドバッド王のことを考えておいででしたね?」

(あぁまたバレてしまったわ)と紅玉は思う。

(昔から紅炎お兄様と夏黄文には隠し事ができないもの)

「……そうよぉ。でももういいわ。どうせ私はその内政略結婚に出される身ですもの。恋なんて知る必要も無いのだわ。」

言っていて、自分で少し悲しくなる。

(そう、どうせ結ばれないのなら。恋なんてしないほうがいいわ。)

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