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紅姫と黒猫の夜

第6章 抱擁


いつもはおいしい食事も、今日ばかりは味気なく感じたし、正面にいるジュダルの顔を見ても、話す気にもなれず、紅玉は惨めな時を過ごした。



夕方、公務を終え、稽古を済ませると、紅玉は裏庭のいつもの場所で泣いていた。

ジュダルに自分の胸のうちを打ち明けながら、泣いていた。

「ぅ……ひっく、私の、おかあ様が……遊女だったからっ………私も他の皇女とは違う…ぅう、卑しい皇女、なんです、って、………ひっく、ひっく、うぁぁぁん」

「ババァは馬鹿だなぁ。母親の仕事なんて、自分じゃ決めらんねぇだろ?母親自身が決めるもんだ。俺なら、自分にどーしよーもねーことで泣かねぇけどな。」

「ぅう………っ、私、卑しいの……?お姉様方とは違うのかしら…?

紅玉の悲痛な問いに、ジュダルは沈黙する。

変わりに、暖かい抱擁で彼女を包んだ。

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