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紅姫と黒猫の夜

第10章 兄

「紅玉っ?!だいじょう………………………………っ!!」

紅玉は腕を血に染めていた。

ガリガリ、という音は、紅玉が自分の腕をひっかいている音だったのだ。

「わたくしのち、きたないの……いや……わたくしのち、きたない、きたないの…」

こんなにも血が流れ、引っ掻く音がグチュグチュという音に変わっても、紅玉は腕をかくのを止めなかった。

(血が……このままじゃ、紅玉が!)

紅覇は突然怖くなった。

もし、紅玉が死んでしまったら……?

こんなに大量の出血だ。

無いとは言い切れないだろう。

そして紅覇は、震える声を張り上げた。

「だ、誰か!!炎兄!!明兄!!雄兄!!蓮兄!!白瑛義姉さん!!ジュダルくん!!だれでも…誰でも良いから早く来て!!紅玉が!!紅玉があぁぁぁ………!!」

恐怖のあまり、最後の方は涙声になってしまう。

しかしそれでも紅覇は叫び続けた。

誰か!!

誰か!!

誰か!!









しかし、数分後に紅明と白蓮が駆けつけるまで、紅玉を助けに現れる者はいなかった。

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