テキストサイズ

紅姫と黒猫の夜

第10章 兄


そしてその言葉に、紅覇が答える。

「わたくしのち、きたないの、って、きたないのは、いやって、紅玉、ぅ、ひっく、泣いてた。っぅ、紅玉、泣いてたっ、いやだ、きたない、きたないのはいや、いや、いやって何度も、いいながらっ……」

紅覇の言葉を聞いて、紅炎と紅明はふっと気づく。




しかし、白龍と白瑛は、わからなそうな顔をしていた。

二人のその顔に、紅炎が語りかける。

「俺や紅明、他の皇女たちは、ある程度地位のある側室の母親から生まれた。でも紅玉は違う。紅玉の母親は、遊女だったそうだ。」

白瑛の顔がひきつる。

紅明は、黙ってしまった兄のかわりに話を進めた。

「もちろん私たち三人は、そんなことで紅玉を差別したりはしません。母親が誰であろうと、紅玉は私たちの大切な妹ですから。………しかし、他の皇女たちは違いました。紅玉のことを忌み嫌い、汚れた血、卑しい皇女、市井の拾い子と呼んだのです。」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ