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紅姫と黒猫の夜

第10章 兄

「しかもそれは、皇女たちに限りませんでした。…城に仕える者たちも、そろって紅玉を汚れた血、と呼んだのです。だから、紅玉に仕える従者はいません。朝起きるときも、夜眠るときも、ひとりきり。さっきのようなことがあっても、紅玉の部屋の近くにはたくさん人が居たというのに、誰も紅玉を助けに行かない。紅玉は、そうやって育ってきたのです。兄である私たちや紅覇にも、心を開くことはほとんどありませんでした。私たちのことはかろうじてお兄様と呼びましたが、皇女たちのことを姉と呼ぶことはありません。紅玉は、自分の血は汚いと、思いこまされてしまっているのです!だから、だから……」

思わず熱を入れて話していまい、がくりと肩を落とす。

「もし、紅玉が助からなかったら…?」

ポツリ

紅明が涙をこぼす。

彼も彼で心配でたまらないのだろう。

白龍にはまだこの話しは難しかった。

白瑛は黙ったままだった。

しばしの沈黙が流れ、聞こえるのは紅覇と紅明のすすり泣く声だけだった。

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