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紅姫と黒猫の夜

第10章 兄

「紅玉…!!」

紅玉を抱きしめる。

小さな小さなその身体は、小さく震えていて、紅覇に抱きしめられたことを恐れているようだった。

「紅覇!!紅玉!!」

紅炎らも続けて飛び込んでくる。

皆紅玉の無事を確認して、顔がゆるんでいる。

しかし、その顔をまたひきしめたのは、紅玉の言葉だった。

「こうはおにいさまはなぜきたないわたくしをたすけたの?」

(ああ、こんなときまで、この子は…)

紅明は思った。

「こうめいおにいさまも、なぜじゅだるちゃんをよんだの?わたくし、しにたかった、のに」

紅玉は涙ながらに言う。

そしてまた、自分の腕を掻こうとする。

「紅玉!!もうやめて!!」

紅覇が出した大きな声に、そこにいる全員が息をのんだ。

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