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真夜中の遊戯

第2章 黒髪の男





「あ、ドMな君としてはむしろ逃げたくなかったりする?」


「………」



あきらかに嫌味だ。



こんなのは無視しておくのが一番良い。




「っていうか、俺君の名前知らないんだよねぇ」


「………」


「買った時は意味分かんない番号しか教えてもらえなかったし」


「………」


「What's your name?」




無駄に良い発音で名前を聞かれ、私は困ってしまう。



私に名前なんかない。



売られる前はあったけれど、その時の私は存在しないということになっているのだ。



つまりその名前を今ここで名乗るわけにはいかない。




「あれ、もしかして言えない感じ?」


「………」


「じゃあ俺がつけてもいい?」



なんでそうなるんだと思ったが、あえて言わなかった。



そんなことを言っても昔の名前を教えられるようになるわけではない。




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