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ショートラブストーリー

第9章 貴史

美夜子はペットボトルをテーブルに置くと

「ねぇ…、たかちゃん」

俺の背後に立つと、そのまま俺の胸元に手を回して、ぎゅっと背中を抱き締められた。

「たかちゃんは…料理上手な人ってどう思う?」

耳元で囁かれるには色気のない話題だな?

「作れるなら…一生旨いもの食べれていいだろうな」

どういう意図の質問だか分かりかねて、つい無難な返しをしてしまった。

「……そっか。成程ね」

「何の話だよ」

「ん?いいの。聞きたかっただけ」

俺の肩口にほっぺた押し付けて、更にぎゅっと抱きつくと、パッと手を放した。

「じゃ、帰るね」

「は?もう?」

珍しい。いつもは帰れってせっつかないと帰らないのに。

「うん。さっきの続き、しようと思って来たけど」

さっきの続き…って、俊明に邪魔された続きか?

俺の顔を見て、美夜子が

「今日は刺激的なキスになりそうだから止めとく」

ペロッと舌を出して笑った。

「…そんなに辛いか?」

「うん。あたし、カレーも甘口しか食べれないし」

「子供かよ!?」

美夜子はふふっと笑って、じゃあね、と帰っていった。

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