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ショートラブストーリー

第9章 貴史

それから何日かして、学校からの帰り道。

「俊明、どうしたんだ?元気ないな」

肩を落としてノロノロ歩く俊明を見つけて声をかけた。

「貴史にーちゃん…ウチ帰るのが怖くてさ」

俺を見ると、力なく笑いを浮かべながら話し出した。

「何だよ。テストの点でも悪かったのか!?」

「違うよ!!…おやつがねーちゃんの菓子なんだよ」

…は?

「…美夜子が作ったのか?」

あいつ、お菓子作る趣味があったなんて聞いたことないぞ。

「ここんとこ毎日作ってるよ。んでそれが全部こっちに回ってきてるんだ」

「へぇ…」

俺の所には回ってこないけどな。

…って事は…。

「貴史にーちゃんも食べてみろよ。げんなりするくらい不味いから!!」

やっぱり。だろうと思った。

その後、話をしながら歩いていって。

俊明は大きなため息をつくと、家に入っていった。

…にしても。

げんなりするくらい不味い、って。

そう話していた俊明の表情を思い出して笑いを浮かべた。

美夜子のやつ、何作ったんだ?



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