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ショートラブストーリー

第10章 美帆②

デザートは、ティラミスと三色のソルベに、小さくカットされたチョコケーキだ。

「美味しそう!!」

テンションが上がるあたし。

笑いながら見てた課長がふいに告げる。

「バレンタインのチョコ、ありがとう」

突然の話に、フォークが滑ってカチャン、と音をたてた。

「え!?あ、はい!!」

嘘っ?課長、何であたしからって分かったの!?

「家で見て、正直びっくりしたけど…ありがとう」

「いえ…そんな事…」

正直びっくり?…何で!?

「それで…あれは、本気…だよな?」

あれ?…何の話?

あたしが戸惑っていると、課長は慌てて

「いや、悪い。冗談じゃないのは見てて分かったんだけど…」

「はぁ…」

意味が分からず、曖昧な受け答えをしてしまう。

「確認するなんて、野暮でカッコ悪いって思うけど…北方さん」

課長が真顔でじっと見つめてくる。

「本当に俺の事、好きなの?」

どくん!!

課長の視線と絡み合って、目が反らせない。

このまま、心の奥まで覗かれそう。

どくんどくんと心臓が加速して音をたてる。

答えようとして口を開く…けど、震えて声が出ない。

あたしはぎゅっと目を瞑ると、頷くことで答えを返した。

おそるおそる課長の様子を見れば。

優しい瞳の…でも困ったように苦笑いを浮かべる課長がいた。

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