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ショートラブストーリー

第5章 遥(はるか)

あれ…。あのまま寝ちゃったんだ…。

薄暗い部屋のなかで目を覚ました。

隣を見れば、布団はキレイなままで…まだ千秋帰ってきてないんだ。

携帯で時刻を確認すると、11:20だった。

…そういえば、露天風呂が12時で切り替わるんだっけ。

念のために千秋に

『気分良くなったからお風呂行ってきます』

って置き手紙して。

入れなくなる前に行ってこようっと。



「うわっ…すごーい!!!」

千秋がオススメするだけあって、露天風呂は広かった。眼下に街並みが拡がっててイルミネーションみたいできれいだし、来て良かった!!

切り替わりの時間が近いからか、私以外誰もいなくて…それも嬉しい。

お風呂の端に寄って景色を堪能していると、脱衣室とは違う扉が開いた。

旅館の人が、もうすぐ切り替わりの時間だって呼びに来てくれたのかな?

振り返って音のする方を見たら

「うわ!すげー広い!!」

腰にタオルを巻いて、景色を眺めてるのは…

「い…池上くん!?」

「え!?…水沢さ…ん…?」

「きゃあああっ!!!」

一瞬の間の後、自分の姿を思い出して、叫びながら肩までお湯に浸かって裸体を隠した。

「な、何でここにいるのよ!!まだ切り替わってないでしょ!?」

「え!?もう12時過ぎてますよ!?」

「ウソ!?だって誰も呼びにこなかったよ!?」

池上くんは困った顔をして…お風呂に入ってきた。

「え!?待って!!入るの!?」

「そりゃ…入らなきゃ風邪引きますから」

「ちょ…こっち来ないでよ!!それ以上近づくの、禁止!!」

私は池上くんに背を向けると、体を見られないように縮こまった。


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