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ショートラブストーリー

第5章 遥(はるか)

二日目は帰る途中にある神社に寄ったり、魚市場で買い物したりして帰路についた。

「それじゃ、お先に失礼します。お疲れ様でした」

帰りも自宅の側でバスから降りる。

「お疲れ様でした~」

…池上くんと一緒に。




「…友達のうちに車取りにいくんだっけ?」

「あ、はい」

「友達って、どこに住んでるの?」

「はい!?えっと…水沢さんはどっち行くんですか?」

「私はあっちの方だけど…」

アパートのある方角を指差す。すると

「あ、俺もあっちの方なんで。途中まで送ります」

「…うん」

途中、魚市場で部長にからまれた話とかして笑ってる池上くん。

私も一緒に笑いながら話をしていくけど。

何だろう。胸の奥に何か詰まってるみたいに、息苦しくて気分が悪い。

「ねぇ、池上くん」

私は足を止めて彼を見上げた。

「聞きたい事があるんだけど。ここじゃ何だから、うちに来てくれない?」

「は?」

池上くんが戸惑ってる。

「あ…ごめん。車取りに行かなきゃね。…やっぱいいや」

ふうっとため息ついて、歩きだした。

すると、慌てて池上くんが追いかけてきた。

「大丈夫です。行きます!!」

「いいの?」

「いいです。…俺も、水沢さんに話したいことありますから」

「何?」

「それは…ここじゃ何なんで」

そう言うと、口元に笑みを浮かべた。

「ふぅん…何か怖いな」

冗談混じりで笑いながら言った言葉に

「俺も…です」

池上くんが小さく呟いた。


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