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暫しの沈黙。

静寂という名の無音の奏でが街路一帯を支配している。

Aは奇妙な好奇心にかられて口を開いた。

「君は…」

黒づくめの痩せた青年は俯いた顔を上げ、死んだ魚のような目に月光が微かに反射した瞬間口を開いた。


『僕はバンパイアのPさ。今さっきディナーを済ませて来たところなんだ。』

「へ、へぇ…」

Aはこの黒づくめの青年の突飛な第一声に疑念を抱く事なく妙に現実味を感じた。
よく目を凝らしてみると痩せた青年の口元が赤く濡れていた。その口元もまた月光のスポットライトにより美しい口紅のように照り輝いている。
死んだ魚の目と赤い口紅…
何ともダークでシュールな組み合わせだろうとAは思った。

『どうだい？ ちょっとばかしそこの公園で一休みしていかないかい？ 』

「えっ！？」

『なあに、捕って食ったりなんかしやしないよ。だって僕はほんの小一時間前にディナーを済ませて来たんだからさ。』

二人の背後からサイレンの轟音が響いて来た。
猛スピードで通り過ぎる救急車…

走り去る救急車を見つめながらAは合点がいった表情で痩せた青年の提案に合意した。



続く…。