未成熟の成長
第1章 ナタリー
「台詞で始まる小説を、俺は好ましく思わない」
男の名は黒木明。
鍛え上げられた肉体と、南国の気候により焼けた黒い肌が見るものを威嚇する。
コンクリート造りの小さな部屋の中をゆっくりと歩きながら、彼は続ける。
「こうすれば面白いんじゃないかとか、考えてるのが大嫌いなんだよなぁ。体言止めをよく使うのも凄く嫌いだ」
部屋の中央には鎖に繋がれた少女が座っていた。
少女の名はナタリー。
まだ初潮も迎えていない、年端もいかない子供だ。
「面白いかどうかは俺が決める。なぁ、ナタリー。お前は今面白くないのかもしれないが、俺は楽しくて仕方ないんだぜ?」
長い金髪を揺らしながら、それでもナタリーは寡黙だった。
目の前の男性など存在していないかのように振る舞った。
全てが始まるのを心待にしながら。