無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

響はさっきからずっとドアをドンドン叩きながら
“莉子ー、莉子ー”って叫んでいる


このまま開けないでその愛しい声を聞いていたいなんて二人には絶対に言えない


「おい、近所迷惑だから早く開けてやれよ」


玄関前に立っているのにまだドアを開けないでいる私に後ろから達ちゃんが言う


達ちゃんの方をクスクス笑いながら振り返ると


「なんかすんげー幸せそうで感じ悪っ」
とふて腐れた



達ちゃんはきっと取り乱してしまったことを
後悔しているんだと思う


明日からただの部下と上司に戻れるように


職場の空気を乱さないように


今、達ちゃんは
精一杯平気なフリをしていると


私は思う。


さっきはあんなに気持ちをぶつけてきたのに


今は“さっきのは忘れてくれ”って感じが
ひしひしと伝わってくる。


全部、私のためを思ってでしょ？


達ちゃん...



私がもたもたしていると
後ろから手が伸びてきて


“ガチャ”っと鍵が開けられてしまった


『あっ...』


ドアが開くと響が血相を変えて立っていた