未成熟の推察
第1章 ミク
とある喫茶店で、匠と津田は向かい合って座った。
黒服は外に一人、二つ離れたテーブルに三人待機していた。
「お前はいつでも私から逃げるんだから、困ったもんだよ」
「さっさと用件を言えよ。俺も暇じゃないんだよ」
「スロットを打つのに暇じゃない、か。よく言うよ」
「カルツアイ」
「なんだそれは。ま、いいか。とりあえずお前にはこれをやろう」
津田は鞄から分厚い封筒を取り出した。
匠は目もくれない。
これが津田の甘い毒だと知っているから。
「いらないの?」
「前払いはありがたいけど、まず仕事の話からにしてくれないか」
「貧乏なくせに慎重な奴だな。ま、いいだろう」
津田は三枚の写真を掲示した。
一枚は白いワンピースの少女。
もう一枚は赤いドレスの美女。
最後の一枚は、ぼやけてはいるが雪男のような巨大な男が写っていた。
「三人、じゃないよな」
「三人全員は流石にきついだろう。このうちの一人でいい。私の元に連れてきてくれ」
「期限は」
「二週間だ」
「短すぎる。不可能だ」
「無理とは言わせない。匠、私が何も知らないと思ってるのか? 最近手に入れたあれを使えば、すぐだろう」
匠は嫌な汗をぬぐった。
この女には、何も隠せない。
嘘も見破られる、負けが確定したゲームだった。
「二週間以内だ。頼んだぞ。そうそう、死んでても構わんからな」