居場所のない世界
第1章 始まりの木
『少しは落ち着いたか…少年よ』
何処で喋っているのか分からず桜を見つめる
少年。
この声は一体…
声の正体が分からず迷う。
『少年の心で喋っているのだ。私は少年の敵ではない。安心するといい』
敵ではない。その言葉を聞いて安心する。
心で喋っている。
それでも、少年は桜を見つめたまま
桜の花弁が飛んできて
花弁は少年の手に落ちる。
そして、少年はその花弁を間近に見つめて微笑んだ。
『………少年……苦しいか?』
…苦しい?
『ここは夢の中、お前の心は……まだ純粋のまま。だが、この先は…地獄をみるだろう。』
地獄?
地獄は見てきたはずだった。
監禁され拷問される。
それだけで苦しくて辛い…地獄のような日々を
『今までのは生ぬるいほうだ。少年はまだ10年しか生きていないだろう。この先にある未来は………地獄だ。』