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とある鬼調伏一族の元旦

第2章 桃花、参ります!

「皆さん終わったみたいですね。では、私は支度に参ります」

「はい」

千鶴が台所を離れようとしたときだ。ここに用のないはずの者がやってきたのだ。

「ちょっと千鶴さんいいかしら」

「なにかしら」

「これを見て頂戴」

そう言って見せられた着物の袖にはほんの少しだが墨がついていた。

桃花の硯を蹴った取り巻きの一人だった。

「これが何か?」

「何かじゃないわよ!桃花さんの所為で着物に墨がついたのよ。なのにあの子ったら謝りもしなかったのよ」

もちろん桃花の所為ではない。

硯に墨は入ってなかったし、当たったのは足なのだから。

着物の汚れは自分の不注意で付いたものだ。

千鶴が何も知らないことをいいことに、腹いせに意地悪を言っているのだ。

さっと千鶴の顔が青くなる。

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