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とある鬼調伏一族の元旦

第2章 桃花、参ります!

「ああ、すみません。こちらで弁償させていただきます」

「別に弁償しろなんて言ってないわ。私はただ一言謝ってほしいだけなの!」

「すみません。後で言っておきますので…」

「桃花さんでしたら書初めが始まってすぐに退室したようですが…。道具もすぐに片付けていたからまだ墨は磨ってなかったと思いますが」

「じ、蒸苑蒔様は遠くにいらしたから見えなかったけですよ。とにかく、後で謝らせてくださいね!」

それだけを口早に言うと、逃げるようにその場をさってしまった。

「ああ、あの子ったらなんて事を…」

「桃花さんは悪くありませんよ。彼女は自分が悪ければちゃんと謝ります」

「だけど…」

「信じてあげてください。あなたに信じてもらえなくなったら桃花さんは一人になってしまいます。せめてちゃんと話を聞いてあげてください」

「はい…」

桃花になにがあったかはわからない以上母としても庇えない時がある。

帰ってきたら話を聞き、それでも形だけでも謝らせておこう。

穏便に済ませるそれが最良の選択だった。

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