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とある鬼調伏一族の元旦

第1章 元旦の朝

「それに、僕は桃花さんは素敵だと思いますよ」

真っ直ぐにそう言われると顔に熱が集中してしまう。

「桃花さんの素直で明るいところが好きですよ」

「あ…ありがとうございます」

本当にストレートに言うものだから、その言葉に特別な意味がなくても照れてしまう。

恥ずかしくて俯いたが、内心嬉しくて口元が緩みそうになっていた。

「ああ、そうだ。これをあげます」

蒸苑蒔が懐から出したのは白い懐紙。

端の方には二匹の兎がいて可愛らしいものだった。

「なんですか?」

「女中さんにもらったものなんですが、僕よりは桃花さんが持っていたほうがいいでしょう」

「ありがとうございます。すごく可愛いですね。嬉しいです」

「その懐紙は女中さんたちの間でちょっとした人気があるんですよ」

「かわいいですもんね。私も買いたいです」

「近くの神社で売ってるそうですよ」

「神社?」

近くの神社といえば、確か縁結びで有名な神社だが、懐紙を売る場所ではない。

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