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とある鬼調伏一族の元旦

第1章 元旦の朝

(どうせあやめさんのお下がりしか用意しないくせに)

前方に座る伯母に向かって、心の中で舌を出してやった。

全員が集まったところで蒸苑蒔が簡単な挨拶をし、書初めが始まった。

桃花も何を書こうかと悩んでいると。

「あ…!」

「きゃ…」

前にいた伯母の取り巻きの1人が桃花の硯に足を当てたのだ。

幸い墨はまだ入ってなかったから何事もなかったのだが。

「ちょっと、邪魔よ。お着物が汚れたら弁償できるの!」

悪いのは自分のはずなのに、桃花に文句をいったのだ。

もし墨が入っていたならば、墨が掛かっていたのは桃花の着物の方だ。

さすがに桃花も笑って流す気にはなれなかった。

道具をさっと片付け、にっこりと笑う。

「人が多いので私は後にします。皆様はどうぞごゆっくり」

そう言って立ち上がり、静かに座敷を出て行った。

「なにあれ!謝りもしなかったわよ!」

「仕方ないわよ。昔から礼儀のない子ですもの」

「まったく、どうゆう育ちをしたのかしら」

口々に溢れる嫌味事。

だがそうやって盛り上がっているのはその場だけで、目に余る振る舞いに周りのものは呆れた眼差しを向けていたが、それさえも気付いていなかった。

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