
Take me
第16章 16
「ごめんなさいね、待たせて」
帰って来てすぐ、お母さんは買い物して来たものを冷蔵庫へしまう。
「二人とも、座りなさい」
お兄ちゃんと俺は、ソファから立ち上がって、いつも食卓をしていたテーブルにお父さんと向かい合わせで座った。
俺とお兄ちゃん、お父さんとお母さんが隣同士で
いつも座っていた席に着く。
「あの、父さん、この間はごめんなさい。」
お兄ちゃんは多分、俺を助けてくれた時のことを謝っているのだと思う。
「生意気な態度取ったりしちゃって…」
「良いんだ、お前が悪いことなど無い。全部俺が悪かったんだからな。」
ほんと昔から、お兄ちゃんに甘いんだ。
この両親は。
「紘夢」
「紘夢」
お父さんとお母さんが俺の名前を呼ぶ。
目の前の二人の両親、両親なのに顔を見るだけで嫌悪感がとてつもなく俺を襲うんだ。
そして、恐怖。
お兄ちゃんが俺の手を握ってくれた、それまで震えている事なんて自分でも気付いていなかった。
「なに?お父さん、お母さん…」
そう呼んで良いのか、躊躇した。
