テキストサイズ

息もできない

第15章 謝って欲しいわけじゃ

春陽目線


俺は何て言えば上手く鍵を開けてもらえるか考えながら急いで階段を降りた


とにかく早く、直に会わなきゃ…!!


ポストで確認すると管理人はアパートの一階の角部屋に住んでいるらしかった


インターフォンを鳴らして暫らくすると年老いた女性が姿を現した

俺は嘘をつく、という罪悪感から手を汗がじんわりと濡らすのを感じながら話した


「あの、すみません。私二階に住まわせていただいている谷口直の兄なのですが」
「あら、お兄さん?」
「えぇ。それで、直から電話があって体調を崩して寝込んでいるということなので看病しに来たら部屋にいないようなのですが、どこへ行ったかご存知ないですか?」


おばあさんは少し考えるような思い出すような仕草を見せた後


「えぇと、そうねぇ……部屋にいると思うんだけれど。階段を降りた様子もないし」
「そうですか……部屋で倒れてないですかね…」
「心配よねぇ。ちょっと待ってね、今鍵を持ってくるから谷口さん…あぁ、弟さんに悪いけど入ってみましょう」


うまく、いったか…?
身分確認もしないで部屋の鍵を開けてしまうところがセキュリティに関して些か不安なんだが、今回に関しては心底有難かった


ストーリーメニュー

TOPTOPへ