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息もできない

第20章 大崎さんの

春陽にバレないように、ゆっくりと深呼吸した
そうやって酸素を取り込まないと頭が回らなかったし、過呼吸になりそうなほど息が詰まっていたから

少しの間沈黙が続く

俺はそれを破るため震える手を握りしめた


「とりあえず、座って。立って話すようなことじゃないでしょ」
「…いや、いい。俺はもう帰るから」


そう言って春陽はその場を離れようと踵を返してしまう


「ちょ、ちょっと待って」


俺は去ろうとする春陽の腕に必死で縋り付いた


こんな
これでお別れなんてないでしょ?
長く付き合っていたわけじゃないけど、こんなんで終われるほど軽い付き合いじゃなかったでしょ!?



すると春陽は俺の手を振り向きもせずに振り払った


「!!」
「………」


なんで何も言ってくれないの…


「春陽!これで終わりなんてないよね!?」


そしてまた春陽は
俺が大好きな口で
顔で
声で
俺を傷つける言葉を発する


「男同士なんだから、本気とかないだろ。始めに声を掛けたのも面白半分だよ」


信じると決めたのに

涙が出そうで
そのまま、泣き崩れそうで


言った後俺を残して立ち去って行った春陽の背中を俺は見ていることしか出来なかった

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