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息もできない

第21章 そろそろ泣きたいのですが

そして仁くんは優しく微笑んだ


「だから、仲間だった綾サンにそんな醜いことして欲しくないんですよ」


整った顔は凄むととても怖いけど、微笑んだ時与える安心感は人一倍大きくて
大崎さんは上げかけていた腰をその場にぺたりとつけた


「せっかくそんなに綺麗なのに」


仁くんが少し顔にかかった大崎さんの横髪をさらりと避ける


なんか…すごいな…
すごく説得力があって、俺たちよりずっと大人な気までしてくる
なんていうの
包容力がある

全部委ねてしまいたくなるような


仁くんの言葉の後、大崎さんは大きな目から涙を流した


「ぅ、ぅ……」


大崎さんから見て机の向かい側にいた仁くんは反対側に移動して大崎さんを優しく抱き締めた


仁くんは本当に大崎さんのこと大事にしてくれてるんだ


なんだか微笑ましいその光景に、俺は大崎さんは今までの苦労を受け止めてくれる存在を探していたのかな、なんて考えていた


結局今回のことで俺は特になにもしてなくて
ただ傷ついただけ
いつもより少しだけ自分の納得のいかないことを解決するために行動に移そうと頑張っただけ

最後には名前しか知らないような高校生に助けてもらうなんて惨めな結末を迎えてしまった

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