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息もできない

第21章 そろそろ泣きたいのですが

春陽の家のドアの前で一度大きく深呼吸をする


よし、いこう


俺はインターフォンをゆっくりと押す

室内に静かに音が響いたのが聞こえた


異常なほど心臓が早く動いてる
怖い


いて欲しい
早く嫌なことを終わらせてしまいたい
そう思う反面
いなくていい
先延ばしにして、忘れてうやむやにしてしまいたい
そう思っている自分もいた


そして


『はい』


と愛しい人の声がインターフォンから電子音に変換されて俺の鼓膜を揺らす

胸と、喉が焼けるほど痛くなるのを感じながら


「谷口です」


と出来る限り冷静に言った
インターフォンの向こう側から微かな動揺が伝わってくる


『…何か用ですか』


大崎さんとのことが終わったことをまだ知らないのか、春陽はまだ俺に冷たい


「お話があります」


そのことに心を痛めて、俺も仕返しのように冷たく返した

すると

『…今開ける』

と春陽が言ってインターフォンから気配が消えた


暫くして扉がゆっくりと開く
そこにはもちろん春陽がいて、見るのは久しぶりじゃないけど会うのが久しぶりだからかすぐに抱きつきたい衝動にかられた

もう終わったんだってすぐに伝えたい

そんなこと出来ないんだけど

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