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息もできない

第21章 そろそろ泣きたいのですが

ドアを開けた春陽は俺を冷たい目で見下ろしながら


「話すことなんて俺にはないんだけど」


その一言目が俺には意外だった

話すことないって追い返すならインターフォンのマイク越しにでもできるから


「大切な話。今回を逃したらもう次はないんです」


俺はわざと丁寧な言葉で話した


それは俺が、人を拒絶する時に話す言葉だから
だってまだ俺は春陽を許してない


俺の請うような目を見て何か察するものがあったのか、春陽は暫くした後しぶしぶ


「……わかった」


と俺を部屋に招き入れてくれた


春陽の部屋の中は俺が前に来た時より大分汚れているように見える


「適当に座って」


と言われて散らばっている洗濯されているのかいないのかわからない洋服やら本やらの荷物をどかして座った


春陽はキッチンに行って俺にコーヒーを淹れて来てくれた

「はい」

とテーブルに置かれて

「すみません。ありがとうございます」

って、また酷く冷たく伝えた

そんな俺の態度に何も言うことなく、春陽は俺の前に座った
そして

「で?話って?俺、この後用事があるんだけど」
「大崎さんとのご用事ですか?」

俺のこの質問に春陽は少しだけ反応した

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