テキストサイズ

息もできない

第21章 そろそろ泣きたいのですが

「…信じてた。本当に。馬鹿みたいなことを話し合ったり、一緒に宿題に苦しんだり…ありきたりの友達だったけど、俺にとってはすごく居心地の良い唯一の場所だった」


震える手を強く握り締めた
涙で視界がぼやけるのを感じて必死にこらえる

もうとっくに、人を拒絶する丁寧語を使う余裕なんてない


「でもそう思ってたのは俺だけだった。友達………3人、だったんだけど。その3人とも、俺を…性欲の対象として見てた。…幸運だったのは、まだ高校生で、みんな男とのヤり方なんて知らなかったこと。脱がされて処理に付き合わされたってだけだったこと」


でも、これでも


「は…み、うらさんの過去の重さには敵わない…けど…これが…俺の…今の俺を…作っ……」


身体の震えがいよいよ堪えきれなくなって歯の根が噛み合わない

話しを続けられなくて俯いていると春陽が話しかけて来た


「…なぁ、直。俺はとりあえず大崎さんとの付き合いはなくなったんだよな?」
「え…?う、ん」


春陽が机を回って俺の方へ来た
近くに座った春陽の、床についた手が俯いた俺の視界に入る

その手は、俺と同じぐらい震えていて
そして春陽は優しい声で言う


「…ごめん。抱きしめたい」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ