テキストサイズ

息もできない

第23章 今度は俺?

俺は器を持って直のところに戻った

背中を支えながら上半身を起き上がらせると、直は鼻をきかせて


「あ、すごい良い匂い」


と呟いた


「お腹空いてきた?」
「うん。空いてきたかもー」


良かった
空腹を感じるならすぐ治るな


ふと直の格好に視線をやる


「あれ、直それ……」
「え?あ……」


直が上着として着ていたのは俺の室内用のパーカーだった

そのことに今気がついたのか直は照れ臭そうに、だけど嬉しそうにパーカーの裾を握った


「起きた時、寒くて……適当に掴んで着てて……一回着替えた時もそのまま着てたの。でも、そっか……春陽のだったんだ……」


ふふふ、と可愛らしく笑う直に堪らず頭を撫でた


「何でそんなに嬉しそうなの?」
「だって、なんか安心すると思ったらやっぱり春陽のだった、と思って」


下半身に熱が集まったのがわかった
けど相手は病人だから我慢

流石に今手を出すわけにはいかないだろ


「そっか」


俺は頭を撫でるだけに止めた自分を心の中で大絶賛しながらお粥を直に手渡した


「はい、食べな。たくさん食べて、もう一眠りしたらすぐに治るよ」


そう言って顔にかかった前髪をよけてあげた

ストーリーメニュー

TOPTOPへ