
片想いの行方
第52章 その男、再起不能
「……それは大打撃ね。
この会社は、広告媒体に重点を置き、イメージモデルにも定評がある。
それらに一切手を引かれたら、売上への影響は計り知れない」
後ろから
もう1人の女の人の声。
「……!! …き、君は…………!」
私が驚く前に、一条さんが声を上げた。
「あら、私の事を覚えているの?」
彼女はふっと笑うと
私の方は見ずに、麗子さんとは逆のヒメの隣りに並んだ。
「ごめんなさい。
会食は色々あるから、私はいちいち企業側の顔を覚えていないの。
……だけど一条さん。
さすがにこんな所で再会するなんて
お互いに思ってもみなかったわよね」
……し、信じられない………
ふわりとした栗色の髪の毛を揺らして
ファーのコートを羽織ったその姿は
初めて見た時に憧れた華やかさを、今でも存分に漂わせていた。
「………優香さん…………」
私が呟くと
彼女は振り返って、微笑んだ。
「……勘違いしないで。
姫宮くんに頼まれて、仕方なく来たの。
ご存知の通り、私、彼には昔の借りがあるから
断れないのよ」
