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片想いの行方

第52章 その男、再起不能



「……………!」



「……な、なぜここに………」



一条さんは明らかにうろたえて、優香さんを見つめる。



「私だって、この会社に姫宮くんとその子がいるなんて知らなかったのよ?

……良くも悪くも、人の繋がりって凄いわ。

世間って狭いのね」




後ろからちらっと見えた優香さんの顔からは、さっきの微笑みは消えていて


冷たい無表情に戻っている。




「あなたも、いつしかの株主総会で知ったと思うけど。

私の父はね、1人娘である私を今でも溺愛しているの」





優香さんは長い髪をふわっとかき分けて、低い声で続けた。




「姫宮くんとこの子を辞めさせたら


その時点で終わりと思いなさい。


即撤退するように、パパにお願いするから」





……………???


な、なんの話………?




話についていけないのに、麗子さんと優香さんの威圧感が凄すぎて


私はもう、茫然として3人を見つめることしかできない。






「……あのなぁ」




ヒメはワザとらしく、大袈裟にため息をついた。




「切っても切れねぇはずの業界から見放されて




筆頭株主に撤退なんてされたら




俺らの会社、終わっちまうだろーが」

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