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片想いの行方

第53章 彼の心




「………ヒメ…………!」



前にも来た公園のベンチに座ると、後ろから美和の声が聞こえてきた。


俺の姿を見つけて、早足で俺の元へ近寄ってくる。




「………………」




外灯に照らされた美和の顔は、泣き過ぎてぐちゃぐちゃだった。




「………ヒメ……私の為に……

全然知らなかったよ……」




体が密着するくらい、美和は俺のすぐ隣りに座った。





「……総力戦だよ。 用意周到だろ?」


「……うん……!」





何度も頷く美和を見て、高ぶった感情が少しずつ治まっていく。





「お前、あんな気持ち悪い奴とよく2年も一緒に居れたな」


「……朝と夜だけだし、慣れちゃってた……」


「本当にメシ作る以外、何もされてねーだろうな?」


「……!されてないよ!」




美和が真っ直ぐに俺を見て答えたから


気付かれないように、ほっと胸を撫で下ろす。





「お前の味わってきた苦しみに比べたら、微々たる制裁だけど。

……少しは、スッキリした?」





この質問に、もう一度美和が頷いてくれたらそれでいいと思っていた。





だけど





「…………うん。


もう、超~~スッキリ!!」





「…………!」





あの頃と同じ口調で叫んだ美和は






予想を遥かに超えて






満面の笑みを俺に見せた。

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