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片想いの行方

第57章 溢れる想い

その言葉を聞いて、左側に体を向けると


彼女は大きな目で俺を見つめていた。


キャンドルの灯が映るその瞳が綺麗で、俺は目を逸らす。





「……聞かない方がいいよ。
俺自身、自分が鬱陶しくて仕方ないから」



「ふふっ。そんなことないよ。
ずっと忘れられない女性への気持ち、再確認したんでしょ?
……素敵だと思うわ」



「…………!」






驚いて言葉を失うと、彼女はふっと微笑んだ。





「……ごめんね、実は知ってたの」





彼女はカクテルを手に取ると、もう一度体を前に向ける。





「何年か前に、バルセロナで飲んだ日の夜。


あの日の蓮は大きな仕事をいくつも抱えていて、私が着いた時は珍しく酔っぱらってた。


その時、ずっと前に付き合った彼女がまだ心の中にいるって、私に “ 詳しく ” 話してくれたのよ」






……………




思わず、手で顔を覆う。




最低か、俺は………







「………悪い。 

覚えてない……」






「うん。


あの頃の蓮は、会社からのいろんな期待や責任を押し付けられていた時だもの。


……でも私、あの時ちょっと嬉しかったの。


普段から一切弱音を言わない蓮が、初めて私に心を見せてくれた気がしたから」

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