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片想いの行方

第57章 溢れる想い

彼女の言葉が、俺の心臓を締めつける。



数週間に1度逢えれば良い方で、俺の出張先と彼女のフライトの時間によって、2、3ヶ月間が空く事も普通だった。




それでも、俺はこの優しさに何度も救われていたのに




勝手に話した過去の女の話を、聞かなかったふりをしてくれていたなんて




………どうしようもねーな、俺……





「……最悪すぎるな。

こんな奴とは別れて正解だよ」



「えー? それを蓮が言うの?

ヒドイ男ね」





彼女はクスクス笑うと、また俺に目線を向ける。





「自分の気持ちに気付く、何かのきっかけがあったんでしょ?

その元カノに、もう一度告白するのね」




「………いや…………」





おとといの夜の、ヒメを追いかける美和の後姿を思い浮かべて



俺は静かに続けた。









「……多分、もう手に入らない。

俺はこの先も片思いのままだ」








忘れたんだよ。




忘れようとしたんだ。





もし、どこかで偶然逢えたとしても




蘇らないように蓋をして、2度と取り出せない1番奥に閉じ込めていたから。





なのに







冷静を装っていたのに






一瞬で心を奪われて、抱きしめてしまうくらい







美和への想いが溢れてきてしまった。

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