
片想いの行方
第58章 忘れられない人
フロアの下では、ちょうどライブが終わったヒメをお客さんが取り囲んでいる。
もうすぐ、夜の10時になろうとしていた。
「……ヤスさん、10時にアンナのお迎えがくるので。
宜しくお願いします」
「……美和!」
アンナが私を呼んだけど、バッグを持ってソファを立ち上がった。
「……アンナ、ごめんね。
ヒメに、凄く素敵なクリスマスライブだったって伝えてね」
「…………!」
「……ヒメに合わす顔がないの。
ごめんなさい………」
逃げるように、螺旋階段を下りていく。
後ろからアンナの呼ぶ声と、お客さんの歓声が聞こえてきたけど
私は振り返らずに店を後にした。
エレベーターを降りて、ビルの外に出る。
イルミネーションが光る街並みに、多くの人が行き来していて。
私はフラフラと駅に向かって歩き出した。
