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片想いの行方

第58章 忘れられない人


『美和の現状を察知して、手を差し伸べて行動に移したのは、ヒメなんだよね。

あいつがいなかったら、美和を救い出せなかった』


『美和が発する何気ない言葉や行動が、ヒメにとっては嬉しくもなるし、傷付いたりもするんだよ』




アンナの言葉が頭の中で響く。






『ヒメは、美和さん以外にも女がいますよ。

あんなイイ男が、美和さんだけに優しいと思ったら大間違いだから』


『ヒメの気持ちを独り占めしてるのに、真正面から応えてあげないなんて。
ヒメが可哀想』




さっきの彼女の言葉が、胸を突き刺す。







「…………っ」




色んな感情が次々に湧いてきて、心が激しく乱れる。



私の身勝手な想いが、ヒメを惑わせてる。



分かってるけど。



私だって、ヒメに心をかき乱されてるの。




他にも女がいるんでしょ?


それならどうして私が期待してしまうことばかりするの?


本気なのか冗談なのか、ちゃんと言ってくれないと分からないじゃない……






「………そうじゃなくて………」






私は立ち止って呟いた。





ヒメに心を乱される一方で




どうしても忘れられない人がいる。




結局10年前と一緒で、私は2人の間で心が揺れているけど





おととい、彼の姿を見た瞬間の衝撃が




一瞬にして、深く心に刻まれて、思い出してしまったの。


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