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片想いの行方

第58章 忘れられない人



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東京タワーを真下から見上げるこの公園は




私がいたジャズバーと、蓮くんのいた場所から、ちょうど真ん中の位置だった。




いくつものイルミネーションが飾られた中で、ひと際存在感を放つクリスマス用のライトアップを



ベンチに座って、静かに見つめていると





「美和」






目線を右側に移すと



2日前に見た時と違って、私服姿の彼が立っていた。





「なんか凄い寒そうだな。
コートとか……マフラーは?」




私が言葉を発する前に、蓮くんが私の姿を見つめる。



あれ……? そういえば……




「……! 
わ、忘れてきちゃった……」




焦ってたとはいえ、よりによってヒメのジャズバーに。


コート、預けっぱなしでそのまま出てきちゃったんだ!


昔から忘れ物が多いとはいえ、ありえない……





「……ほんと、変わってねーな」





蓮くんはそう言うと


私の隣りに座って、自分のマフラーを私の首にかけた。




「…………っ」



「前も同じ事した記憶があるんだけど。
もしかして、ワザと狙ってた?」



「………!
ね、狙ってないよ……!///」




私が慌てて答えると、蓮くんはふと笑った。




「…………っ」




白い息が2人の間に舞い上がる。



胸がドキドキして、苦しい。

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