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片想いの行方

第58章 忘れられない人


「……!蓮くん、いいよ、大丈夫……」




私が言い終わらないうちに


蓮くんは自分のコートを脱いで、私の肩にかける。





「…………っ」


「………美和」





蓮くんは私の肩に手を置いたまま、真っ直ぐに見つめてきた。



その顔からは、さっきまでの笑顔は消えている。





「……お前は、ヒメの事が好きか?」


「…………!!」






唐突な言葉に驚きすぎて、体が固まる。


蓮くんは私を見つめたまま、目を逸らさない。





「……なんて、本当は聞かなくても分かってる。


美和を直接助けたのはあいつだし、おとといヒメを追いかける姿を見て、きっとそうだと悟ったから。


俺が出る幕は無いって、分かってるんだ」




「…………っ」





蓮くんは切なそうな顔をして、私の肩から手を外した。



胸が苦しくて、言葉が出てこない。


あの頃と同じだと思っていたその瞳は、もっと深くて、私の心を締めつける。







「蓮くん、私は………」





なんとか口を開いたけど、その後が続かない。



なんて言えばいいの?


自分でも嫌になるほどの、この気持ち。


彼に伝えてもいいの………?

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