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片想いの行方

第59章 弱さと痛み



絞り出した本音が言い終わらないうちに




アンナが俺の体を抱きしめた。




体に伝わる温かさと、もうひとつの命の音に包み込まれる。





「………腹の子供、女?」





目から止めどなく溢れる涙で、声まで震える。





「……男の子だよ」



「……なら、将来は不良決定だな。

こんな時間まで、こんな弱虫の男といたら伝染する」





その体に突っ伏したまま呟いた俺を




アンナはさらに強く抱きしめた。







「……優しい男になるよ」







子守唄のような穏やかな言葉が、頭の上で響く。






「真っ直ぐで、芯が強くて。


誰かを真剣に愛する心を持った、優しい子になるわ。


………ヒメのように」







………届かない想いに、ただ精一杯しがみついている。



狂おしい程の美和への気持ち


取り出せないくらい心の奥底へ、閉じ込めることが出来るだろうか。







目指す目標があれば、大抵はこなせるし手に入るけど





………10年前に泣いてから、一度も見せなかった自分の涙。






今度ばかりは、自信がなかった。



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