テキストサイズ

不器用なくちびる

第20章 【春菜 14才】

……………………

文化祭当日。
うちのクラスの合唱は
無事大成功を納めた。
栞の伴奏は完璧で…
そう言えば、橘の好きなピアノでも
栞に負けてるな〜私。

縮毛矯正して、親に海苔みたいって
笑われた髪の毛を指でくるくる
巻きながら私は考えていた。

栞…最後まで私に打ち明けて
くれなかった。
もしかしたら…
って思ってたんだけどな。

栞にとって、あの場面に居合わせた
橘と私は、椎名と同じように
忘れたい過去の一部なんだろうか。

それでも私は諦めきれなくて
放課後の音楽室に向かうことにした。
中庭を挟んで教室の反対側にある
音楽室には人影が見えている。

音楽室の前の廊下に行くと
ちょうど橘が音楽室の引き戸を
そっと閉めているところだった。


「あっ!たち…」


すぐに「しー」っという指をつくり
私を追い返そうとする橘。
顔を背けていて表情はわからない。


「どうしたの?
栞いるんでしょ?何してるの?」


「わからねぇよ…
わからねぇけど…邪魔したくない…」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ