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不器用なくちびる

第22章 【椎名 16才】

「何それ…?
あの子ずっと見送ってたよ?
…椎名のこと好きなんじゃないの?」


俺はいら立っていた。
それはこの時期になると毎年のことだ。
今年も…美優をあんな目に合わせた男は
捕まらなかった…


「あ〜!面倒臭えなぁ。
じゃあ、あいつとはもう会わねえよ。
他の女にすればいいだろ?
穴が開いてりゃ何でもいいんだ。」


「何それ…
みんな誰かの大切な子供なんだよ?
それをそんな風に…
そんなの妹さんの犯人と同類だよ!」

………

なんだそれ…?
それに…こいつ、知ってたのか…

すげえ腹が立った。
でも同時に俺は、この時を待っていた
かのような気持ちにもなっていた。

汚ねえ俺
美優を殺した俺
情けない俺
人を愛する資格も
愛される資格も無い俺

誰か俺を罰してくれ…


俺は家を飛び出していた。

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