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不器用なくちびる

第10章 別離

そうと決めたらやることが
いっぱいあって、この半年…
特に夏休みは本当に忙しかった。

まず、ブランクを取り戻すため
ピアノ教室に通いつめた。

不安はあったけど、
身体はちゃんと覚えていて…
久しぶりのピアノの音色は私の
心と身体に染み込むように馴染んだ。

癒されるって
こういうことを言うんだな…
もっと早くやれば良かったと思った。

英語の勉強も死ぬほど頑張った。
もともと1番好きな科目だったけど、
暮らすとなると準備することは
たくさんあった。

そして…島にはこの夏帰れなかった。

少なくとも3年間は帰れないと
思うからどうしても帰りたかった
けど…仕方ないよね。

…イギリスに行くことは、
この学校の子には言わないつもりだ。

…ここに友達は…いないし…

いつも心の中で使ってしまう
このフレーズ。
つぶやく度に、橘くんや春菜ちゃんの
顔が浮かんでは、消えた…

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