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殺人鬼の棲む島

第37章 5日目 早朝 黒鵜館リビング

「誰か出掛けるならいたちの退治をしてもらえないかしら?」

紫響はレコードに針を落としながら頼む。

「いたち?」

遥風が首をかしげる。

蓄音機からはヴィバルディの春が流れだした。

「そう。いたずら好きのいたちさん」

紫響は十代の娘のような笑みを浮かべる。
いつもの表情とはまるで違う、その無防備なまでの笑顔に女性の遥風でさえもドキッとさせられる。

魔性という言葉が具現化したような存在だった。

「これくらいの風邪、何てことはない。わしが退治してやるかのぅ」

京茶屋はぽんと膝を打って立ち上がる。

「駄目ですよ、京茶屋さん」

望が可愛らしい猫目で睨む。

「ちゃんと風邪を直してください」

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